派遣法の改正

2015年9月30日に改正労働者派遣法が成立し、既に施行されています。

この派遣法改正がIT業界に影響を与え始めています。

派遣期間は業務内容でなく雇用形態に制限される

会社の仕事は正社員がする、だけど最大3年まではテンポラリとして派遣労働者を受け入れてもいいですよ、というのが2015年8月までの派遣法です。

2015年の改正労働者派遣法ではこの派遣期間の制限が大きく変わりました。

期間制限派遣法改正前派遣法改正後
自由化業務専門28業務
派遣先単位原則1年最長3年制限無し3年(延長可能)
派遣社員単位有期雇用3年
無期雇用制限無し

自由化業務と専門業務の違いを撤廃

改正前の派遣法では派遣期間は原則1年、労働組合の意見により最長3年までとされていました。

しかし、この派遣期間の制限には例外がありました。

専門的な知識・技術を必要とする28業務(平成24年の労働者派遣法改正前は26業務でした)であれば派遣期間の制限は適用されなかったのです。

  1. ソフトウエア開発
  2. 機械設計
  3. 機械操作
  4. 通訳・翻訳・速記
  5. 秘書
  6. ファイリング
  7. 調査
  8. 財務
  9. 貿易
  10. デモンストレーション
  11. 添乗
  12. 案内・受付
  13. 研究開発
  14. 事業の実施体制等の企画・立案
  15. 書籍等の制作・編集
  16. 広告デザイン
  17. OAインストラクション
  18. セールスエンジニアリングの営業
  19. 放送機器操作
  20. 放送番組等の制作
  21. 建築物清掃
  22. 建築設備運転
  23. 駐車場管理
  24. インテリアコーディネーター
  25. アナウンサー
  26. テレマーケティング
  27. 放送番組等における大道具・小道具
  28. 水道施設等の設備運転

これらの専門28業務に限って派遣期間の制限は無しとされていました。

派遣法改正により、専門28業務と自由化業務により派遣期間の違いが撤廃され、すべての派遣労働者に同じ期間制限が適用されることになりました。

ソフトウエア開発は派遣法施行当初から例外扱い

そしてソフトウエア開発は専門業務の1つでした。

1986年まではプログラマを含め、派遣など認められていませんでした。

しかし、1986年に労働者派遣法が施行されたことで派遣という働き方が可能になります。

施行当初に例外扱いされた専門業務は13のみでした。

  1. ソフトウェア開発
  2. 事務用機器操作
  3. 通訳・翻訳・速記
  4. 秘書
  5. ファイリング
  6. 調査
  7. 財務処理
  8. 取引文書作成
  9. デモンストレーション
  10. 添乗
  11. 建設物清掃
  12. 建築設備運転・点検・整備
  13. 案内・受付・駐車場管理等

ソフトウエア開発はこの時点で既に例外扱いで無期限で派遣可能な業務となっています。

つまり、日本のプログラマ、ソフトウエア開発技術者の派遣には30年近い歴史があることになります。

プログラマ、ソフトウエア技術者の派遣が当然のように行われているのはこのためです。

派遣先単位の期間制限は事実上撤廃?

派遣先単位の期間制限とは同一事業所が派遣労働者を受け入れできる期間の制限です。

改正前の自由化業務は原則1年、過半数組合等への意見聴取により最長3年まで延長可、となっていました。

改正後は一応3年としているものの、過半数労働組合への意見聴取によりさらに3年延長、その後も同様に3年間延長、ができてしまいます。

これでは自由化業務の派遣期間制限が事実上撤廃されたようなものです。

この3年という歯止めがなくなったことで経営者は高い正社員でなく、安い派遣を選択することになります。

従来の派遣法はこの派遣に置き換えられる正社員を守っていたわけです。

派遣社員単位の期間制限は雇用形態による

前述の通り、派遣先の事業所は事実上、いつまでも派遣を使い続けることができます。

しかし、派遣元に有期雇用されている派遣社員、つまり登録型の派遣社員を3年を超えて使い続けることはできません。

別の派遣社員への入れ替えが必須になります。

それに対し、派遣元に無期雇用、つまり正社員の派遣社員であれば期間制限はありません。

特定派遣を廃止

IT業界に大きく影響するのがこれです。

派遣法改正前には特定派遣(特定労働者派遣事業)と一般派遣(一般労働者派遣事業)の区別がありました。

一般派遣特定派遣
派遣労働者の雇用形態登録
常時雇用
常時雇用
許認可許可制届出制

派遣法改正によって特定派遣と一般派遣の区別はなくなり、派遣事業は許可制に一本化されました。

ただし、3年の猶予期間が設けられており、新設以外の特定派遣事業は2018年(平成30年)9月29日までは改正前と同様に営むことができます。

2018年(平成30年)9月30日以降も派遣事業を続ける場合、以下の要件を満たし、許可を取る必要があります。

  • 基準資産額が 2,000万円 × 事業所数、かつ負債総額の1/7以上
  • 預金が 1,500万円 × 事業所数 ある
  • 20平米以上の事務所

IT業界には大きな影響か

ご存知のとおり、常時雇用(正社員)で派遣労働者を雇用し、特定派遣するビジネスが当たり前になっているのがIT業界です。

自称IT会社、実体は社員の机すら無い派遣会社が上記の要件を満たすのは簡単ではないでしょうか。

満たせなければ派遣事業はできなくなります。

だからと言ってそのような会社が自社事業所での請負開発にシフトするとはちょっと思えません。

請負契約で客先常駐といういわゆる偽装請負が増えるかもしれません。

ソフトウエア業界の現状から予想される日本メーカーの未来

1986年から続く派遣法が日本のソフトウエア業界に良い影響を与えたでしょうか?

IT業界にいる者でYESと答える者は皆無でしょう。

2015年の改正労働者派遣法もソフトウエア業界に影響がありますが、まずはソフトウエア以外の業界、特にメーカーはどうなっていくのか予想してみたいと思います。

何しろ歴史ある派遣の大先輩であるプログラマーの予想ですから多少の説得力はあるかもしれません。

メーカーはなくなっていく

ソフトウエアメーカーというどんな会社が思い浮かぶでしょうか?

マイクロソフト、アドビ、オラクル、・・・

それって海外のソフトウエアメーカーですよね。

では日本のソフトウエアメーカーは?

・・・

ゲームを作ってるソフトウエアメーカーの名前をいくつか挙げられれば立派というところでしょう。

世界中に自動車や家電を輸出するモノづくり大国であり、たくさんの「メーカー」が存在する日本なのにソフトウエアメーカーはほとんどありません。

日本語ワープロですら日本のソフトウエアメーカーの製品はシェアを取れず、文字の大きさを指定するのに「ポイント」とか意味不明の単位を指定する海外製ワープロを使っている有様です。

モノづくりより人を派遣するほうが簡単

モノづくり大国日本でソフトウエアがなぜそんな悲惨な状況なのでしょうか?

売れるソフトウエアを開発するのは簡単ではありません。

莫大な費用をかけてソフトウエアを開発しても売れないかもしれません。

しかし、ソフトウエア開発には無期限の派遣が認められています。

プログラマーを派遣すれば毎月確実に売り上げが立ちます。

これはもうね・・・メーカーなんてやってられないでしょ。

雇用コスト削減の効果は最初だけ

2015年の派遣法改正では派遣労働者受け入れの期間制限は撤廃されましたが、同じ派遣労働者を3年を超えて使い続けることはできません。

2015年の改正によりメーカーは高い正社員を安い派遣に置き換えることではじめのうちは高い利益を上げると思います。

しかし、安い給料で使われる派遣にモチベーションなど期待できません。

さらに3年ごとに人を入れ替えるうちに技術は継承されず、創りだす製品やサービスの魅力は薄れていきます。

そして海外メーカーとの競争に敗れ、淘汰されていきます。

よく日本は雇用コストが高いから海外との競争に負ける、という話を聞きます。

しかし、日本のソフトウエアが負けたのは雇用コストが安い国ではありません。

自社でソフトウエアを開発するより、他社に技術者を派遣したほうが楽。

そんな派遣法に負けたのです。

ソフトウエア以外の日本メーカーもきっと同じ運命を辿ることでしょう。

派遣でプログラマーをやるなら

派遣には有期雇用の一般派遣と無期雇用の特定派遣があります。

一般派遣は仕事がある期間だけ、派遣元の会社と雇用契約を結びます。

つまり、仕事がなくなれば無職になります。

プログラマーという仕事を有期雇用の一般派遣でやるメリットがあまり思い浮かびません。

2015年の派遣法改正前なら専門業務だったソフトウエア開発なら無期限に派遣を続けることができました。

しかし、今は派遣法の改正によってたとえソフトウエア開発であっても有期雇用の一般派遣だと最長3年までしか同じ派遣先で働けません。

優良な顧客先に3年以上派遣されたければ就職して無期雇用、つまり正社員になるしかなくなったわけです。

しかし現実には派遣から正社員になる人はごくわずかしかいません。

そのため、派遣でプログラマーをやるくらいならフリーランスのほうが遥かにメリットがあります。

フリーランスのプログラマーになるのは全然難しくありません。

フリーランスのプログラマーになるには

プログラマーとして大きく年収を上げたいのであれば、フリーランス(個人事業主)になるのは悪くない手段です。

正社員を辞めフリーランスとして継続して仕事を得るのは一般的には大変なことだと思いますが、プログラマーの場合はIT業界特有...

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